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記憶術ないし記憶技法の主な技法

記憶術には,ギリシャ,ローマの時代から受け継がれているものと,その後それぞれの時代に開発されたものや,わが国において独自に開発されたもの(渡辺,1975)までさまざまなものがある.筆者らが広義の記憶療法において使用している記憶術ないし記憶技法の主なものとしては,以下のような技法がある.連鎖法(連想結合法,リンク・システム,the Link system,・かけくぎ法(基礎結合法,ペグ法,the Peg system),・)音声変換法(the Phonetic translation system),・場所法(the Loci system),・頭文字法(Acronyms,the First letter system),・SQ3R法ないしPQRST法,・キーワード式高速読解・速読法,などである.

1)連鎖法(連想結合法,リンク・システム )

 連鎖法は記憶術のシステムのなかで最も初歩的なものであると同時に最も基本的な技法である.一連の事項を順番に記憶する場合(系列学習課題)に適している.

 連鎖法は,2つのステップからなる.(1)記憶するリストのそれぞれの項目についての視覚的イメージを描く,(2)それぞれの項目を次の項目とイメージで結合する.あくまでも2つ(項目)ずつ結合することによってなされる(たとえば,Fig.1のAとB,BとC,CとDのように).

 

          A → B  → C → D  → E  

    Fig.1. 連鎖法(リンク・システム)による視覚的イメージの連鎖

2)かけくぎ法(ペグ法 )

 かけくぎ法(ペグ法)は,記憶した材料の順番を引き出すのに有効な方法である.例えば,数字の1にある項目を結びつけ,数字の2に別の項目を結びつけて覚え,以下,3,4,5,...というように,数字に順番に記憶すべき項目を引っかけて覚えようとする方法である.しかし,数字は抽象的であるので,記憶すべき項目となかなか結びつけにくい.したがって,そのような抽象性の問題を解決するために,予め各数字の代用として具体的な単語(名詞)を結びつけておき,それらの数字を代用する具体的な単語(名詞)に新しく覚えようとする項目を引っかけて覚える(結合する)方法が工夫されている.この方法がかけくぎ法(ペグ法)である.かけくぎ法の場合,かけくぎ(ペグ)となるペグ・ワードは完全にマスターしておかなければならない.この方法は,17世紀中頃に,Henry Herdson が場所法に修正を加えようとしているときに開発したものであると言われている.

 かけくぎ法において使用されるかけくぎ(ペグ)としては,以下のようなペグが挙げられる. 

 例1.身体要所(・頭,・額,・目,・鼻.・口.・顎,・首,・肩,・乳房/胸,・へそ,・下腹/腹,・陰部/急所,・腿/もも,・膝,・足)

 例2.家族構成「・祖父/おじいさん,・祖母/おばあさん,・父親/お父さん,・母親/お母さん,・兄/お兄さん,・姉/お姉さん,・自分/私,・弟,・妹,など)

 例3.クラスの出席番号表(・青山,・石田,・植田,・江川,・大山,....など)

 例4.一年の月別行事(・凧あげ/凧,・豆まき/豆,・雛祭/雛,・桜祭/桜の木,・子どもの日/こいのぼり,・時の記念日/時計,・七夕/たんざく,・原爆記念日/原子雲,・老人の日/老人,・体育の日/運動場,・文化の日/勲章,・クリスマス/サンタクロース)

 例5.十二支(・ねずみ,・うし,・トラ,・うさぎ,・タツ,・へび,・うま,・ひつじ,・さる,・とり,・いぬ,・いのしし)

 例6.数字音変換法によるリスト

 例7.五十音数字変換法によるリスト

 例8.五十音単語変換リスト 

 例9.場所法の応用リスト

 例10.その他

3)音声変換法

 音声変換法はWinckelman(1648)が開発した方法であると言われている.その後,Loisette(1896)が修正を加えて,現在の変換システムが定着するに至ったものである.英語の音声変換法は1から10までの数字にそれぞれ変換用の子音を当て,母音を組み合わせて数字を有意味な単語に変換して記憶する方法である.その場合,母音は数字への変換には無関係である.この方法は,数字を記憶するために主として用いられるが,同時に,かけくぎ法(ペグ法)のためのかけくぎ(ペグ)としても使用できる.本来のかけくぎ法(ペグ法)では10項目以上のかけくぎ(ペグ)をつくることはなかなか難しいとされているが,この方法によって多数のかけくぎ(ペグ)をつくることができるという点でも有効である.

 日本語の音声変換法としては,数字音変換法と五十音数字変換法の2種類が挙げられる.

両者とも,英語の音声変換法と同様に,数字を記憶するためにも,かけくぎ法(ペグ法)のかけくぎ(ペグ)リストとしても使用することができる.

 (1)数字音変換法:数字を日本語の数字の発音から連想される有意味な単語(単語の最初の1ないし2音を使用する)に変換し,数字を記憶する際には,数字を記憶するのではなく,変換された単語のイメージを連鎖法あるいはかけくぎ法(ペグ法)を用いて記憶する方法である.

 

 例1.・「1」=「いち」=「市」,・「2」=「に」=「荷」,・「3」=「さん」=「桟」,・「4」=「し」=「鹿のし」,・「5」=「ご」=「碁」など.

 

 (2)五十音数字変換法:数字を日本語の五十音を用いて有意味な単語に変換する方法である.日本語の五十音の各「行」の5つの音声に,それぞれ同一の1個の数字を当てる.数字を2個ずつ区切り,数字2個のもつ音声をもとにして有意味な単語に変換する.この場合にも,数字を記憶するのではなく,変換された単語のイメージを連鎖法やかけくぎ法(ペグ法)をもちいて記憶する方法である.

 

   「ア行」(あ,い,う,え,お)はすべて「1」

   「カ行」(か,き,く,け,こ)はすべて「2」

   「サ行」(さ,し,す,せ,そ)はすべて「3」

   「タ行」(た,ち,つ,て,と)はすべて「4」

   「ナ行」(な,に,ぬ,ね,の)はすべて「5」

   「ハ行」(は,ひ,ふ,へ,ほ)はすべて「6」

   「マ行」(ま,み,む,め,も)はすべて「7」

   「ヤ行」(や,  ゆ,  よ)はすべて「8」

   「ラ行」(ら,り,る,れ,ろ)はすべて「9」

   「ワ行」(わ,      ん)はすべて「0」

 たとえば,数字の「32」を変換しようとする場合には,「さかづき」「さくら」「シカ」「スカート」などが連想される.また,「85」であれば,「やなぎ」「やに」「やね」などが連想可能である.五十音数字変換リスト(01=「ワイシャツ」, 02=「ワカメ」, 03「ワシ」, 04「ワタ」など)は,電話番号の記憶や歴史年表をはじめ数字の記憶に使用されるほか,かけくぎ法(ペグ法)のかけくぎ(ペグ)としても活用することができる.

4)場所法

 場所法は記憶術のシステムの中では最も古い歴史をもっており,紀元前500年頃から17世紀の中頃(ペグ法や音声変換法が開発される)までは,最も有力な記憶術とされていたものである.ギリシャの詩人Simonides によって考案されたものであり,ギリシャ,ローマの雄弁家がこぞって用いたと伝えられている.

 熟知している通りや部屋あるいは部屋の家具などに,記憶したい事項を結びつけて記憶する方法である.かけくぎ法(ペグ法)では,予め数字の順番に相当するペグ・リストを記憶しておかなければならないが,場所法で使用される「場所」は,すでに熟知されているものであるので,記憶するのには,かけくぎ法よりも労力を要しないという利点がある.ただし,場所法では項目数の多い「場所」リストを用意することはむずかしい.

例:「自分の家の場所」の使用例:・家の玄関に通じる道,・玄関のステップ,・玄関のドア,・下駄箱,・ロビーの絵,など.    

5)頭文字法

 記憶しようとする事項の頭文字を用いて,できるだけ有意味化して記憶する方法であり,日常生活の中でもよく用いられている.

 例1.NHKー日本放送協会

 例2.五大湖:HOMESーヒューロン湖,オンタリオ湖,ミシガン湖,エリー湖,スペリオル湖

 例3.アメリカ合衆国の十大州:あて,かもめ,あね,こわいお(私はかもめ.姉恐いお)ー・アラスカ,・テキサス,・カリフォルニア,・モンタナ,・ニューメキシコ,・アリゾナ,・ネバダ,・コロラド,・ワイオミング,・オレゴン

 頭文字法は,十分に熟知したリストを記憶する際には効果を発揮する.

6)SQ3R法ないしPQRST法

 SQ3R学習法 the SQ3R Method は,欧米では広く推奨されている学習法である(Morgan and Dease,1969; Rowntree, 1970).SQ3Rというのは,Survey(概観する), Question(質問,疑問をもつ), Read(読む), Recite(暗唱する)及び Review(復習する)という単語の頭文字をとったものである.

(1)Survey stage (概観段階):これから学習することを「ざっと読む」こと,概要をつかむこと,見出しに注目すること及び絵やグラフを吟味することを含めて,全体の概略をつかむ段階である.

(2)Question stage (質問段階):前の段階に続いて「ざっと読み」をするのであるが,見出しをもとにして,「...とは何か」というように,自分で質問をつくってみる段階である.

(3)Read stage (読む段階):前の段階で自分でつくった質問を頭に描きながら,材料を熟読する段階である.

(4)Recite stage (暗唱段階):この段階は「読み直し」の段階であるが,見出しやその他の手がかりとなる諸節についていろいろな質問を描きながら読み直しをするとともに,その節の中心的な内容を頭に描くようにつとめることが課題とされる.

(5)Review stage (復習段階):この段階では,すでに暗唱できた点やまだ暗唱できていない点をチェックするとともに.質問を再び頭に描きながら,概略の見直しをする仕上げの段階である.ちょっと時間をおいてから再び復習すると,学習が回復され,強化されるからである.

SQ3R法とほとんど同様な学習法として,PQRST法(Rovinson,1970)がある.この方法は,Robinson (1970)が提唱したものといわれており,Preview(概観), Question(質問),Read(読み) State(応答)及びTest(テスト)の頭文字をとったものである(Wilson, 1987).

7)キーワード式速読速解法

 キーワード式速読速解法は,SQ3R法の簡便法として勝俣(1995)が改良した方法である.新聞や教科書などの長文の学習材料を速く,正確に理解するために考案された方法であり,次の4つの段階からなる.

 第1段階:見出しと前文(あれば)を読み,内容の概略を把握する段階であり,SQ3R 法のSurvey(概観段階)に相応する.見出しには,I,1,1)などの数字を付すと便利である.

 第2段階:本文のブロック(行替えから行替えまでのまとまった部分.段落)単位に番号をつける段階である.段落が変わるごとに,機械的に(1)(2)(3)...の記号を付すと便利である.また,ブロック内の重要事項については,・,・,・...などの丸付き数字を付すと便利である.

 第3段階:ブロックごとに1つのキーワードを探し,□で囲む段階である.キーワードはその「ブロックの見出し」と考えればよい.

 第4段階:□で囲まれたキーワードをつなぎながら要旨を把握する段階である.

 自作ノートを作りたい場合には,予め付してある数字とキーワードを書き抜くことによって,容易に整理が可能である.

8)その他

 上記の諸技法のほかにも,リズムをつけて覚える方法,記憶しようとする材料をテープにとって,それを聞きながら記憶する方法やスーパー・ラーニングなどがある.

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記憶術には,ギリシャ,ローマの時代から受け継がれているものと,その後それぞれの時代に開発されたものや,わが国において独自に開発されたもの(渡辺,1975)までさまざまなものがある.
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